大判例

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神戸地方裁判所 事件番号不詳 決定

主文

本件再審査請求を棄却する。

即時抗告期間を三十日間延長する。

理由

本件再審査請求の理由の要旨は次の通りである。

請求人ガブリエル・バルべは千九百四十一年十二月二十九日頃、神戸地方裁判所に於て、軍機保護法違反被告事件により懲役三年の判決を受け、上告したが、千九百四十二年四月二日上告を棄却され、右判決が確定したので服役し、千九百四十五年四月二日刑期満了し、出所したのであるが、右起訴事実は事実に反し、且その訴訟手続は被告人に対する不当な強制と弁護権の制限の下に行はれた。即ち

一、右起訴事実は開戦より一年以上前である千九百四十年十一月のことであり、且軍事上の機密であると指示されたのは日刊新聞に掲載された公知の事柄であつて、しかも東京(とんきん)の日本占領軍の平和的友好的な有様を宣伝している事実である。

二、係検事の取調は仏蘭西語の通訳はなく、英語の通訳でなされ、その応答も筆記せられず、検事が一語か二語記録するにすぎなかつた。検事は書記に解し難い法律的な文句を口述し、請求人にその調書の訳文も見せずに署名を求め、之を拒絶すると「公判が遅くなるだけだ」といひ、取調を中断したので、止むなく署名した。

三、公判期日数日前になつて刑務所長から弁護人の選任を許されたので湯浅弁護士に依頼しようとしたところ、この種事件の弁護人は制限されており、同弁護士は之に入つていないから西岡弁護士にせよとのことで、之に従うほかなかつた、そして同弁護士に署名を強制された前記検事調書の訳文の伝達を頼んだところ、看手からその話はしてはならないととめられ、結局弁護人には請求人が刑務所内で不足に感じていることを当局に取次ぐこと位しかしてもらえなかつた。

四、公判廷に於ける判事の尋問は前記の不当な検事調書に基づいて全てなされ、且弁論も数分間しかなされなかつた。

平和条約の実施に伴う刑事判決の再審査等に関する法律に基き再審査の請求をするには、平和条約の実施に伴う刑事判決の再審査の手続に関する規則、刑事訴訟規則第二百八十三条の定めるところにより、趣意書に原判決の謄本の添付を要し、しかして原判決の謄本が再審の裁判の基礎をなすべきもので最も重要なものであることは再審査等に関する法律第四条第一項に照し明白であるから必ずその添付を要するものなるに拘らず、本件請求にはその添付がないから、右請求は前記法律第六条、刑事訴訟法第四百四十六条にいう再審の請求が法令上の方式に違反する場合に該当するので棄却するの外ない。

尚本件決定の即時抗告期間を刑事訴訟規則第六十六条に則り三十日間延長する。

仍つて主文の通り決定する。(昭和二九年五月二六日神戸地方裁判所第三刑事部)

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